活動の報告

西宮こしき岩アスベスト裁判報告  上田 進久


【その1】アスベストは飛散したが、健康被害はないのか!?

〈裁判により明らかになったこと〉
 2019年4月16日、神戸地裁で2年9ヶ月に及ぶ裁判の判決が下されました。
判決では「原告らの請求は棄却」されましたが、私たちが求めていた真実が明らかとなりました。
 「アスベストは相当量存在し、その一定量が飛散した」というものです。

 また、裁判によって建物全棟の設計図書が開示され、アスベスト使用が確認され、レベル1=10箇所所、レベル2=9箇所、
レベル3=130余箇所という驚くべき量のアスベストが存在していました。
 レベル1や2のアスベストを除去する際には厳重な飛散防止策を講じることが法律で義務付けられていますが一部を除いて
そのような事実はありませんでした。
 現在、世間では、わずか1か所であっても不適切な除去が問題になっています。
 アスベストがコンクリートに付着したまま重機により解体され粉砕されてダンプに積まれ運ばれた事は全て違法行為ですが、
事業主(株)創建や解体業者の三栄建設、さらには監督指導すべき立場の西宮市に対して、あまりにも大規模な「アスベスト
隠し」に加えて非人道的な行為に憤りを覚えると共に健康被害を想起せずにはおれません。

〈健康被害に関する西宮市の答弁の誤り〉
 先の市議会において、よつや市議の質問に対する環境局長の答弁で、「一定量の石綿が飛散した事を否定することは出来ない
が・・・その量は人体の健康に影響を及ぼすものであったと認めることは出来ない」と答えました。
 傍聴席で仲間は全員違和感を覚えました。その理由は
 ①裁判において原告は健康被害を立証するに至らなかったことを意味しているに過ぎない事、その理由は住民が最初からアス
  ベスト疑惑を訴えて市に調査を求め続けたにもかかわらず、「立ち入り検査でアスベストはないことを確認している」と係
  官が欺瞞的な説明を繰り返す間に、建物は撤去されて証拠は消滅したこと
 ②健康被害は医学的科学的に専門家によって検証されるべき問題であること
 ③健康被害の判断根拠とされたアスベスト測定値は、唯一飛散防止策を講じた一部の除去作業において短期間測定されたもの
  であり、10ヶ月間の大規模解体を反映しているものではないこと
 アスベストによる健康被害は潜伏期が長く因果関係を証明するのが困難であることが問題となっていますが、中皮腫は低濃度
でも発病するとされています。
 アスベストは安全についての基準値はなく、慎重に判断されなければなりません。
 このように考えると、西宮市の答弁は余りにも軽率で無責任と言わざるを得ません。

〈西宮市に求められること〉
 皆さんはこの答弁を聞いてどのように理解されたのでしょうか。
 「アスベストは飛散したが健康被害を及ぼす程ではなく安心である」と誤解していませんか。
 その理由は上述しましたが、誤解を生じるような説明は適切ではなく、訂正するよう求めています。
 アスベスト疑惑を訴え続けた住民に対し、市は一貫して「アスベストはない」と説明を繰り返し最後まで適切な調査を拒み続け
ましたが、「裁判によってアスベストは相当量存在し、その一定量が飛散した」ことが初めて明らかにされました。
 西宮市には飛散させたことの責任を重く受け止めて被害を最小限に抑えるためのリスクマネジメントが求められています。
 それは、作業員や周辺住民、さらに通学していた多くの児童や生徒たちへの注意喚起であり、検診体制の構築であり、被害を想
定した状況まで思いを巡らすことです。

 (その2はこちら


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