活動の報告

テーマ別解説〈なぜ 情報が伝わっていないのか〉


 この理由は簡単で、国や自治体が「震災アスベスト」について何ひとつ見解を示さないからです。
 そもそもアスベスト問題は、いつ吸ったかもわからず、いつ発病するかも不明で「漠然」としています。
また、震災アスベストについては、
 ①曝露リスクが明らかでない
 ②被害者の実態も不明
などと問題があるため、公的な情報提供は全く行われていません。
 アスベストを扱う作業員の他にもアスベストには無縁の人の発病は重く受け取らなければなりません。
 それほど被災地が危険な状態であったことを示しています。
 兵庫県や神戸市などは、アスベストの危険性について、市民に周知し、全国のボランティアの人たちに
注意を呼び掛けることが大切だと思います。

〈被害者の実態が不明であること〉

 私たちが知りたいことは、被害者の全体像や被害規模ではないでしょうか。
 労働者は厚労省、ボランティアや住民、労災保険未加入の作業員は環境省などの縦割り行政にもよりま
すが、国や自治体ではまとまった形での調査は行われておらず、被害規模は誰も把握していません。
 また、メディアによる「○人目の労災認定」という報道は、労災保険加入者に限定した情報であって、
被害の全体像が不明であるうえに、誤って過少評価されています。

〈アスベストの曝露リスクが不明であること〉

 これには、安全対策についての重大な問題が含まれています。一般にリスクを検討する場合、現場の
アスベスト濃度測定値が重要な参考資料となります。
 ところが、阪神・淡路大震災では、あろうことか被災地で行われた環境庁(当時)の調査方法が歪め
られたのです。
 青石綿の現場であっても白石綿濃度だけを測定し、これを「石綿濃度」として公表していました。
 発ガン強度は石綿の種類によって異なり、青石綿は白石綿の10倍と最も強い。即ち、測定された濃度
値は、飛散石綿の一部に過ぎず、しかも発ガン性の強い石綿は含まれていないのです。
 従って、測定値に基づくリスクは誤って過少に評価されています。
 具体的には「飛散量は少なく、身体への影響は小さい」など(国や自治体にとっては都合の良い)の
誤った判断となっています。
 この実例は、 神戸市ホームページに掲載されていますが、未だに検証もされず修正もされないままで
あることに神戸市の見識を疑います。市民の健康に関する誤った情報は、早急に訂正すべきでしょう。

〈水面下で拡大しつつある被害者の実態〉

 2024年1月13日、神戸新聞が「石綿疾病18名が阪神・淡路を経験」の見出しで報道しました。
この調査報道によって、水面下で拡大しつつある被害者の実態が初めて明らかになりましたが、この調査
報道の意義は大きいです。
 18名の中で、震災復旧に携わった作業員の他にアスベストを扱う作業とは無縁のボランティアが2名含ま
れていたことに注目しました。
 一人は被災者に対する理髪サービスの提供のため、他の一人は水を運んでいました。
 このような事例は、2018年にも報道があり、被災地で1か月間勤務の警察官が中皮腫で亡くなり公務災害
が認められています。
 作業員以外で、アスベストを扱う作業とは無縁の人からも被害者が発生している事実を重く受け留めなけ
ればなりません。
 被災地では街全体が危険な状態であったと考えるべきでしょう。

〈行政の不作為〉

 アスベスト被害者の調査は行われておらず、被害実態も把握されていませんがこれが我が国の安全対策の
レベルです。
 現在、早期発見のためには「肺ガン検診」を受けることになります。アスベスト曝露を自覚している人が
少ないという現状では、「震災によるアスベスト曝露の危険性」を伝えたうえで、検診を呼び掛けることが
何よりも大切です。
 行政においては、
 ①被災地でアスベストが飛散したこと
 ②その曝露は少なからずリスクを伴うこと
を震災に係わったすべての人たちに周知すべきです。
 なぜ、このような「当たり前」のことができないのでしょうか。

〈今後の課題〉

 アスベストが原因の肺ガンや中皮腫の潜伏期は長いことが知られています。
 なかでも中皮腫(主に胸膜中皮腫ですが、他に心膜、腹膜などがある)の潜伏期は約40年とされ、2035年
をピークに被害者の増加が危惧されています。
 2035年前後を含めて今後20年間は、積極的な肺ガン検診を受けるよう心掛けてください。
 また、30年が経過したからといって「発病を逃れた」と油断しないようにしましょう。




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