活動の報告

神戸市営住宅の解体工事において吹き付けアスベストの調査漏れが発覚


1)公共事業こそ模範的な安全対策を

 私たちは、兵庫県保険医協会と協力して、神戸市営下山手住宅4号棟の解体工事に先立って、2020年7月に神戸市の担当課と面談協議した。
 解体工事の際は、アスベスト飛散防止を厳守し、リスクコミュニケーションに基づいた住民説明会を行うなど、公共工事として、民間業者の
模範となるよう要望した。

2)吹き付けアスベストの調査漏れが発覚

 ところがである。2020年10月、解体工事の発注者である神戸市と元請け業者との懇談の場において、電気室でレベル1となる「吹き付けアス
ベスト」の存在が調査から漏れていることが判明したのだ。目の前で、市職員が業者を叱責するという茶番が繰り広げられた。

 神戸市では、解体工事入札前に予備調査を行っているが、ここでも同じ調査漏れがあり、市は気づいていなかったのだ。
 調査漏れの原因は、調査の基本とされる「設計図書」の調査を怠っていたことによるが、あまりにもずさんな市の対応は極めて重大な問題で
ある。

 設計図書は診療における「カルテ」に該当し、建物の詳細の状態が記録されている重要なものである。
 私たちは、この設計図書を情報公開請求により入手して、専門家に調べてもらった情報を持って協議に臨むようにしている。

3)思わぬ方向へ展開

 その後の経過は、大変興味深い経過となった。
 ウソや無理な説明が重なって、挙句の果ては事業見直しから再入札へとより深刻な問題へと発展したのだ。

4)神戸市の説明

 調査漏れ発覚以降、神戸市議会の各種委員会でこの問題が取り上げられたが、神戸市環境局長は「調査漏れの原因は元請け業者にあり、市に
は責任はない」との答弁を繰り返すのみである。
 この答弁は、内輪だけの結論であり到底納得できるものではないことから、局長との面談を求めているがずっと拒否されたままとなっている。

5)事業見直しから再入札への疑惑

 調査漏れが発覚して後、業者は多くの調査を追加した。また、市では第三者(ひょうご環境創造協会)による再調査を約束した。

6)業者間の調査結果の不一致

 ところがである。これら3業者による調査(Tによる予備調査・HとSによる事前調査・ひょうご環境創造協会による再調査)で、その結果に相
当の不一致が認められたのだ。
 この不一致の原因は慎重に検討されなければならないが、専門家の間でも今後の調査方法や分析において何らかの改良点が得られるかもしれな
いとして重要な資料となっている。
 しかし神戸市は、元請け業者に丸投げして聞き取り調査を任せており「その原因は未だ特定できていない」と他人事のように答弁しているのだ。

7)5億円跳ね上がった工事費
 再入札にあたっては、アスベスト除去の施工面積が当初の6.6倍に拡大し、工事費が2.7から7.7億円に跳ね上がったのだが、具体的な根拠は示さ
れていない。
 調査結果が一致していないにもかかわらず「アスベスト含有」を最大限に採用しての結果であるが、再調査の結果とは大きく異なっていること
に疑問が残る。

8)ずさんな予備調査

 また神戸市では、予備調査を行って入札の参考にしているが、その検体数は少なく、しかも「アスベスト含有」が僅かに4検体で、今回問題とな
った外壁塗り材ではたったの2検体(しかもA、B、C棟の内A棟のみ)であった。
 このような杜撰な予備調査では、事業規模を把握して計画を立案することは不可能であり、適切に業者を選定できるはずもない。
 公共事業における事業計画や入札の仕組みについての抜本的な見直しが求められる。

9)委員会における虚偽答弁

 この問題については、神戸市議会の各委員会で論議されているが、答弁内容の真偽のほどは確認されないまま重要な課題がスルーされている。
 都市交通委員会(2021年2月19日)における建築住宅局長や同副局長(2021年9月2日)の虚偽答弁を例に挙げよう。

 電気室の調査漏れについて「電気室は神戸市の管理ではなく、施錠されていた・・・(事前調査では)元請け(業者)がカギを壊してでも調査す
べき」と勇ましく答え、さらに「解体に先立って(電気室を使用していた関西電力が)機材を撤去した時に(関西電力から)カギを返してもらえば
よかった」などと繰り返し強調した。

 また、「事前調査の段階で、私どもがカギを管理していない電気室の・・・」などと、電気室は神戸市の管理下ではなく、市の責任は全くないか
のような答弁であった。
 これに対して「2019年12月には機材をすべて撤去してカギは廃棄し、その旨を市に伝えた」という関係者の証言が得られており、市の答弁と矛盾
している。

 百歩譲って、たとえ施錠されていたとしても、カギを開けて調査することが当然であるのだが、請負業者に責任を押し付けるために欺瞞や虚偽が
重なって、より深刻な事態へと発展しているものと考えられる。

 これら一連の市議会における虚偽答弁は、当然看過できるものではないが、この重大な問題に対して追及しない市議会もまた、神戸市民の信頼を
損ねる結果となっているのだ。
 もはや市議会自らが市民に対して説明責任を負っているのではないかと考える次第である。


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