活動の報告

判決から一年が経過して ―判決文のまとめ―


 「西宮旧夙川短大校舎解体におけるアスベスト曝露事件」裁判の判決が下されて1年が経ちました。裁判により「解体現場には相当量のアスベストが存在し、その一定量が飛散した」ことが事実認定されました。
 この事実認定により、当時の西宮市環境局長の「アスベストはない、調査するつもりはない」、環境保全課職員の「立ち入り検査したがアスベストはない」などの「アスベスト隠し」によって、アスベストが飛散した事実がうやむやのまま闇に葬られることなく、後世に残すことができました。
 もしも裁判をしていなければ西宮市が繰り返し主張した「アスベストはない」として済まされていたことになり、将来健康被害が発生した時には取り返しのつかない事態になっていたかもしれません。
 判決内容は到底納得できるものではありませんでしたが、現状のルーズな飛散防止対策を改善することが急務であると判断して控訴しないことにしました。
 ところが、西宮市と数回にわたり ①アスベスト飛散の事実の公表 ②健康リスクの評価 ③注意喚起を行う ことを求めて協議を重ねましたが、「判決内容については話すことはない」として協議することを拒否されています。
「オープン西宮」を掲げて当選した石井市長の豹変には落胆しています。
 このような状況にあって、判決文を読み直してまとめました。アスベスト問題特有の課題がハードルとなっていることを皆様にも広くご理解いただきたいと思います。
 判決に至る概略は、以下のとおりです。
 (1)最初に校舎全11棟の設計図書が開示され、それが有力な証拠となり「解体時には相当量のアスベストが存在し、その一定量が飛散した」ことが事実
  認定された
 (2)被告三栄建設に対しては不法行為によりアスベストを飛散させた、被害が出れば賠償責任を負う
 (3)事業主である(株)創建に対しては大気汚染防止法の改定直前であったため責任を負わない(現在は発注者の責任)
 (4)西宮市に対しては権限不行使や消極的裁量行使について多くの指摘があった
 (5)しかし、唯一飛散防止策が講じられた短期間のアスベスト濃度測定値が採用された結果、「健康に影響を及ぼす程度のものではなかった」と判断
  された
 (6)大気汚染防止法や国家賠償法においては「受忍の限度を超えていない」などの理由によりそれぞれが違法行為を免れて、原告の訴え「平穏生活圏・
  生命身体権の侵害に対する賠償請求」は棄却された

 健康被害の立証は、原告側にあるとしても、僅かなアスベスト濃度測定値だけを根拠に判断されたことについては納得できるものではありません。
 判決文に頻用されている「客観性」や「具体的」は、その根拠があまりにも脆弱であることの証でしょう。
 約3年に及ぶ裁判を終えて、発病していない段階で住民が「客観的・具体的」に健康被害を立証することはほとんど不可能です。アスベスト問題は第三者委員会において検証することが重要となります。
 この裁判の経験をこれからの取り組みに活かしていくためにも「判決文のまとめ」をお読みいただければ幸いです。


判決文のまとめ(PDFファイル)



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