活動の報告


判決について、私の考え

西宮こしき岩アスベスト裁判原告代表 上田 進久


この裁判は勝敗で判断するものではなく、原告の慰謝料請求は、健康被害まで立証することはできな
いとの理由で認められなかったということです。
判決理由には、アスベストの存在を認め、これが三栄建設の不法行為により飛散し、今後被害があれ
ば責任を負うとあります。
また、西宮市については「積極的な調査義務はない」との市の主張を退けて、業者への適切な指導や
自ら設計図書を調査することを怠ったことは、住民の健康や安全を守るための妥当な行為とは言えな
いとしました。

これらの結果は、設計図書の重要性を示し、行政の事なかれ主義や権限不作為を戒める内容であり、
今後の飛散防止に大いに役立つものであり、原告の提訴からの強い願いが叶えられたとも言えます。
また、これらの事実を記録に残すことができました。

しかし、判決理由には最も危険とされるレベル1と2の違法解体には言及されておらず、この点が納
得できない不当な判断であると考えます。
また、厳重な飛散防止策が義務付けられているレベル1や2のアスベストを対策もせずに工事を強行
するという暴挙は、戦争で大量破壊兵器や生物兵器が禁止されているように、非人道的で残酷な行為
として、事業主の創建も含めて断じて許す事はできません。

発ガン性物質であるアスベスト問題は、誰一人曝露に気付く者はなく、20年から50年先の健康被
害を予見する能力と、現状の危険を排除する強い実践力が必要とされます。
この様にアスベスト問題は、その特殊性ゆえに難しい事を再確認し、あらためて「アスベスト基本法」
などの法整備が急務である事を再確認しました。

今後のアスベスト飛散防止のために、少しずつ改善策を積み上げてゆくと共に、住民が関心を高めて
世論を盛り上げる事が重要であり、これにより判決が変わってゆくものであると信じています。

― 判決は山菜のごとほろ苦し ―  進久