2016年10月25日(火) 「第1回口頭弁論が行われました」
2016年10月25日(火)神戸地方裁判所101号法廷において、こしき岩アスベスト訴訟の第1回口頭弁論が行われました。
冒頭で意見陳述の機会をいただき、原告団代表の上田から、訴訟を提起した動機、事業者の無責任体質や行政の不作為に対する不信感、
そして、この裁判を通じて、住民がアスベスト問題に関心を持ち、身近で行われる改修や解体工事を注目・監視することにより安全な
社会が実現し、将来健康被害で苦しむ人が一人でも少なくなることを願っていることを訴えました。
次回の口頭弁論は、2016年12月20日(火)13:15から神戸地方裁判所216号法廷で行われます。
私たちストップ ザ アスベスト西宮は、この裁判を通じて、建物解体に伴うアスベスト飛散による健康被害を決しておこさない社会の
実現に向けて取り組んでまいりますので、引き続きのご支援のほどよろしくお願い申し上げます。
私は今、万感の思いでここに立っています。
これまでしてきた事や、アスベスト健康被害への不安と、この裁判にあたって自主的に参加してくれた原告の思いなどです。
38名の原告は、4才から81才までの全ての年代から成っています。解体現場の近くで遊ばせていた子供が、成人して病気になった
としたらどのように謝ればよいのかという親の自責の念や、業者や西宮市に対する憤りが提訴の原動力となりました。
アスベストが原因とされる中皮腫は、2年生存率が30%という極めて悪質な癌です。また、肺がんは中皮腫の2~3倍発病している
と推測されています。
アスベストは、髪の毛の5000分の1と極めて細く目に見えず、無味無臭で刺激もないため、曝露を受けても誰も気が付きません。
従って飛散させないように防止策を厳守することが重要となります。
しかしながら、我々の地元西宮市甑岩町の旧夙川学院短大の解体工事において、十分な調査がされないまま解体工事が行われ、アスベ
ストが飛散と健康被害が危惧される事態に至りました。現場から1km以内には多くの学校があり、隣接した通学路を子供たちが利用し
ていました。
このような状況であるにもかかわらず、真相解明も責任追及もうやむやにされようとしていることを我々は決して許すことは出来ません。
(業者への不信)
最初の説明会における、「2日前に市からの知らせを受けて初めてアスベストがある事を知った」という発言や、後日、「短大が建設
された当時は、アスベストがいたる所に使用されている」としながら、「市から知らせを受けた場所以外にはアスベストは無い」とい
う発言に疑問を持ちました。解体時の状況は、粉じんがひどく、近隣では洗濯物を取り込まなければならないことが度々ありました。
動画は粉塵が漂っている様子です。解体の衝撃の度にダイアモンドダストのような大量の粉塵が飛散してきました。あまりのひどさに
説明会を開くように求めましたが、聞き入れられませんでした。また、学生寮の解体は届出すらされずに、敷地境界の防音シートまで
取り除いて作業が行われました。
アスベストは無いと説明されていた9号館の空調ダクトパッキングからアスベストが発見されました。また、学生寮などの設計図書か
らはアスベスト含有建材が大量に使用されている記録が出てきています。
(西宮市への不信)
まず、事前調査票が差し替えられたにもかかわらず十分な調査をせずに黙認したことです。また、2013年7月26日は3回目の立
入検査で、初めて建物内部を調べた時には、既にほとんどの内装材が撤去されていました。写真は報告書に添付されていたものです。
更に、住民が発見できた9号館の空調ダクトのアスベストをどうして気が付かなかったのかということも不信の理由です。
そして、この空調ダクトパッキング(レベル2)や設計図書によりアスベスト使用を指摘したにもかかわらず、西宮市は「アスベスト
はない、調査するつもりはない」との態度を変えませんでした。これは権限不作為と言わざるを得ません。
自分たちが知らない間に大量のアスベストを含む建物が飛散対策をせずに解体された可能性があることに、近隣住民である私たちは衝
撃を受けました。アスベストが飛散した場合深刻な健康被害を受ける恐れがある近隣住民には、解体前に設計図書を確認する権利はあ
りません。
住民の健康は、業者の法令遵守と行政の監督・指導にかかっていますが、それに期待することは難しい現実を知りました。自分の子や
孫、地域の子どもたちに将来健康被害が発生するかもしれないのに、設計図書等の資料さえ確認できないままこの問題が闇に葬られる
ことがあってはならない。真相を解明し、アスベストが飛散していたならその責任を明確にすることが若い世代に対する私たちの責任
であり、問題をうやむやにしないことが、今もある何百万棟のアスベスト含有建物の解体工事の被害を最小限に抑えることにつながる
という信念のもと、私たちはこの裁判を提起しました。
私たちの思いは、近隣住民の立場で建物解体工事のアスベスト飛散問題に取り組む、ストップ・ザ・アスベスト西宮の結成につながり、
建物解体工事を住民が監視していく取り組みが広がっています。
2015年の中皮腫死亡者数は初めて1500人を超え、今後も増加が確実視されています。2006年にアスベストの使用が全面禁止
されて以降は、主要なアスベスト飛散の発生源は建物の解体工事です。建物に残存したアスベストをいかに安全に除去できるかは行政や
業者がこの問題を深刻に受け止めて、徹底した事前調査と適切な解体工事をすること、近隣住民への情報開示を徹底すること以外に方法
はありません。
この裁判を通して、住民がアスベスト問題に関心を持ち、身近で行われる改修や解体工事を注目・監視することにより安全な社会が実現
し、将来健康被害で苦しむ人が一人でも少なくなることを願っています。