会員からのメッセージ

レイチェル・イジュンリム賞 The Rachel Lee Jung-Lim Award

2018年2月9日、大阪で開かれた関西建設アスベスト訴訟大集会に参加した折、講演者の古谷
杉郎氏が、自ら事務局長を務める、石綿対策全国連絡会議にレイチェル・イジュンリム賞が
授与された、大変名誉なことだ、と述べた。
受賞理由をメモしたいと思う。

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過去30年間、石綿対策全国連絡会議(BANJAN)は、私たちに何万ものアスベスト被害者のこと
を気づかせてくれました。

BANJANは、2005年にクボタによるアスベスト関連疾患を明らかにしました(クボタショックと
して知られています)。
これは、アスベスト問題とそれがいかに働く者の労働衛生だけでなく、住民の環境衛生にも影
響を与えるか、日本社会の注意を呼び覚ましました。

活動家と被害者を両輪にして走り続けた30年間は長く困難な道のりでしたが、BANJANがはじめ
たこの枠組みは、隣の韓国からはるかインドネシア、インド、パキスタンや他のアジアと世界に、
野火のようにひろがっています。

BANJANは、労働者と住民の連携、労働組合と市民団体の連携が専門家や被害者と手を携えて取
り組むことが、社会がアスベストの脅威からの安全を実現するために必要であることを示してき
ました。
私たちは、連帯と感謝の気持を込めて、BANJANの30周年をお祝いします。

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ネットで Rachel Lee Jung-Lim Award を調べてみた。
アスベスト問題について多くを書かれている、Laurie Kazan-Allen 氏のブログの中にこの賞に
ついて書かれた文章を見つけた。

  • The Rachel Lee Jung-Lim Award by Laurie Kazan-Allen


  • 2012年12月20日、ローリー・カザン・アレン氏が記していた文章を以下に訳してみたいと思う。

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    国際アスベスト禁止事務局 レイチェル・イジュンリム賞

    2012年12月21日はレイチェル・イジュンリムが亡くなって一周忌の日です。
    レイチェルは、温かい微笑みを絶やさず、広い心を持った、優しい魂そのものという人でした。
    彼女の人生の最終目的は、21世紀に生きる女性の典型的なものでした。つまり、それは家族で
    あり、教育であり、仕事であり、友人たちだったのです。
    悲しいことに、子供時代の偶然の出来事が、彼女のすべての計画を断ち切ってしまいました。
    韓国のアスベスト工場の近くで暮らした少女時代に経験した有毒な暴露によって、アスベスト
    原因のガンである中皮腫にかかってしまったのです。
    彼女がちょうど39歳の時のことでした。
    この病気の診断によって引き起こされる挫折感は、同様の病気にかかった者によってしか理解
    され得ないものでしょう。
    貝の中に引きこもってしまう人もいます。
    住み慣れた環境の中で親しい人々に囲まれて静かに過ごす人生を選ぶ人もいます。
    レイチェルは、それらのいずれも選択しませんでした。
    その代わりに彼女は決心したのです。アスベストの使用が死をもたらすことについて語ること
    ができるならばどこへでも出向き、それについて発言することを。
    そしてその通りに行動しました。
    彼女は韓国で、日本で、カナダで、インドで、そしてインドネアで開催されたイベントに参加
    しました。
    いずれの場合にも、彼女は、どのようにアスベストが彼女の人生を奪ったかについて、心の底
    から語りかけました。
    彼女のスローガンは、no more asbestos, no more asbestos victims
    「これ以上アスベストは必要ない、これ以上アスベストの犠牲者を生んではならない」でした。
    そして、消費者に向かって、政治家たちに向かって、実業家たちに向かって、アスベストの使
    用を中止するよう嘆願しました。
    2010年カナダのケベックでのアジア連帯ミッションに参加していた時、一人のカナダ人が、末
    期ガンの病気を患っているにはあまりに健康そうに見えると、彼女をペテン師呼ばわりしまし
    た。
    それは、彼女が亡くなる一年前のことでした。
    レイチェルの思い出は、彼女を知る人々、あるいは彼女の言葉を聞いた人々すべての人々の心
    に、今もくっきりと鮮やかに残っています。
    明日12月21日には、アジアアスベスト禁止ネットワークに属する6つの団体が主催して、ソウ
    ルにて、「2012年 環境保護という正義のために挙げる犠牲者の声」という題のプログラムが
    開催されます。
    そこで、第1回レイチェル・イジュンリム賞が授与されることになっています。
    この賞を受賞するのは、ケベックの州知事ポーリーン・マロイスです。

    彼女は2012年の選挙で、アスベスト産業に貸し出した5800万ドルの債務を帳消しにすることを
    約束したのです。
    この行為によって、彼女は、以下のことを保証したのです。
    すなわち、さらに25年以上も続くであろうケベックのアスベスト輸出計画が破棄されることを。
    また、カナダでも、海外においてもあまりに多くの悲劇を引き起こしてきたこの産業が終業す
    ることになることを。

    マロイス知事に贈られる記念の額には以下の言葉が書かれています。

    「私たちは、アスベスト産業廃止こそが、アスベスト原因疾患にとって最良の治療であること
    を知っています。ですから、カナダでアスベスト採掘を廃止することは、前進のための巨大な
    一歩なのです。」

    We know that prevention is the only cure for asbestos-related diseases, so the
    cessation of asbestos mining in Canada is a HUGE STEP forward.

    レイチェルがこの選択を喜んでくれるに違いないと私は思っています。

    2012年12月20日

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    日本の、石綿対策全国連絡会議(BANJAN)は、第6回 レイチェル・イジュンリム賞を受賞した。
    この賞をオーガナイズしているのは、以下の団体ということである。

    The Asian Citizen's Center for Environment and Health The School of Public HealthSeoul
    National University Ban Asbestos Network Korea Asia Monitor Research Center International
    Ban Asbestos Secretariat RightOnCanada.ca.

    なおケベック州ポーリーン・マロイス知事は、同じく選挙の公約として、ジャンティイ原子力発電
    所の第2号機の運転停止と廃炉を指示した、ということです。
    市民の70%が脱原発を望んでいると言われる日本ですが、選挙の度に、原発再稼働と原発輸出を推
    し進める与党を選んでいることは、その政策を支持している、ということでしょう。

    (Y E)