第4回 空気中のアスベスト濃度測定と基準値
アスベストは繊維状の鉱物で、空気中1リットル当たりの「繊維状粉塵の総繊維数」や「石綿繊維数」(本/L)などで
表されていますが、正確に読み取る事が重要です。
目的により以下の3つがありますが、(2)は現在該当する場所はありません。
(1)定点観測:特定の地点で大気中の有害物質を測定し監視すると共に時代による環境の変化を記録しています。
2014年の環境省による一般住宅環境での全国平均アスベスト濃度は総繊維数で1リットル当たりわずかに0.16本でした。
(2)大気汚染防止法による敷地境界での基準:大気汚染防止法の総繊維数10本/L以下という基準値はしばしば誤用さ
れていますが、規制の緩かった1989年に石綿製品の製造工場の敷地境界で白石綿を前提に決められたものであり、より
発ガン性の高い青・茶石綿が含まれている建物の改修や解体工事においては適応するべきではありません。
2006年に石綿製品の製造が禁止されて後は、これに該当する場所は存在しませんが、今でもマスコミや説明会などで1
0本を基準として誤って使用されている事があり、注意を要します。
(3)環境省のモニタリングマニュアルによる区画境界での管理基準:改修や解体工事において、アスベストの漏洩を防止
するために総繊維数1本超の場合、電子顕微鏡などでより詳しい検査を行い、石綿繊維数を確認して石綿の種類を識別し、
その発生源を突き止めて飛散防止措置を行うとしています。
環境省の考えは実に明快です。即ち住宅環境での平均値は0.16本であり、1.0本を超えた場合は、何処からか漏洩している
ことになり飛散防止に役立てます。
阪神淡路大震災で環境庁が実施したアスベスト濃度測定結果(環境省に確認したところ白石綿繊維数とのこと)は、定点観
測での最高値は6本でしたが、1年後で0.4本、その後は0.1本前後と低下していました。
また解体現場周辺では20本となっていますが、研究者らの調査では青石綿の解体現場で160~250本という高濃度の
測定値を記録しています。
いずれにしても、震災直後はアスベストがかなりの程度飛散したことは明らかであり、作業員や住民が曝露を受けたことが
危惧されますので、病気を早期に発見するために検診を受けることが大切です。
~次回はアスベスト患者救済法についての予定です~