第3回 阪神淡路大震災とアスベスト
1995年1月17日の震災当時は、アスベスト飛散については職業曝露が主な問題であり、大気汚染や環境曝露について
具体的な防止策は示されていませんでした。
震災直後の混乱した中で倒壊した建物の解体やがれき除去が行われ、その結果アスベストが飛散し環境曝露が起こり
ました。これは、環境庁の大気中粉塵測定調査によって確認されています。
ここでは、アスベストを除去する際に最も注意を要する「吹き付け」アスベストに絞って話を進めます。
現在では、これを除去するには室内をビニールシートで密閉して陰圧に保ち、防護服を着た作業員が手作業で除去す
る、という大変厳重な防止策が定められています。
ところが震災直後では建物を覆うシートもなく散水もされないままで作業が行われ、それをマスクも着けないで住民が
見守っているというひどい状況でした。
アスベストの中でも発ガン性の高い青色石綿が吹き付けられている建物の解体現場周辺での研究者らによる調査では、
基準値の160~250倍という非常に高い測定結果が報告されています。
震災の被害状況については、吹き付けアスベストが多く使用されている鉄筋・鉄骨の倒壊が1,224棟あり、その中で約
100棟がアスベストが除去されないままで重機によって解体されたであろうといわれています。
また当時は、解体についての法的規制は無く、行政では兵庫県が4月下旬に神戸市が5月上旬に解体指針を出して対
応しましたが、その遅れは否めません。
当時、いち早く現地入りした研究者らによる生々しい報告があります。
それによれば、混乱した中のあちらこちらに倒壊した建物の青色石綿吹き付けや、商店街アーケードの鉄骨の吹き付け
などを発見して、注意を呼びかけています。
震災から22年が経ち、少なくとも5人の中皮腫患者が発生しており、今後の増加が確実視されています。
解体やがれき処理の作業員や、高濃度曝露住民の方はハイリスクである事を再確認して、長期間にわたっての肺がん
検診(「アスベスト検診」の問い合わせ先: 兵庫県疾病対策課)をお受けになるようお願いいたします。
この記事を書くにあたって確認しましたが、兵庫県ではがれき除去の作業員で中皮腫患者について、震災との関係を
認めていません。
その結果アスベスト検診においても問診票には、職業曝露についての問いはありますが、震災についての問いはあり
ません。
前述したハイリスクの方々に情報を提供して検診を促すような積極的な行政の取り組みが望まれます。
~次回は、大気汚染の粉塵測定について考えます~