連載コラム 今なぜアスベスト問題なのか

第2回 アスベストによる健康被害

アスベストは、WHOによれば明らかな発ガン性物質として分類されています。
中皮腫や肺がんの原因となりますが、髪の毛の4,000分の1と大変細く、何ら刺激もないため、
いつ吸い込んだか気づく人はいません。
中皮腫は、胸膜や心臓を包む膜や腹膜に発生するガンで、発見しにくくまた治療も困難であ
るため、3年生存率は3割と極めて重篤な病気です。
また、肺がんのリスクは、喫煙で5倍、アスベストでは10倍と高くなっています。
中皮腫の原因はアスベストであると言われていますが、潜伏期は20~50年と長く、発病
してもいつ曝露を受けたか明らかな人は3割に過ぎません。
アスベストが「静かな時限爆弾」と称される所以です。
また、肺ガンはアスベスト曝露の濃度に関係するとされていますが、中皮腫は低濃度でも発
病すると言われています。
その他ガン以外では、アスベスト肺と言われる塵肺や、胸膜プラークなどがあり、アスベス
トを吸いこんだ証拠ですので注意深く経過観察をする事が必要です。
集計によれば1年間の中皮腫死亡者数は、1995年で約500人、2005年で約1,000人、2015年で
初めて1,500人を超えました。
このように、中皮腫だけでも既に25,000人以上が亡くなっており、今後の増加が確実視され
ています。
一方、肺ガンは中皮腫の約2倍発病しているとされていますが、正確な集計はありません。
これは、水俣病やイタイイタイ病、四日市ぜんそくなどに匹敵する戦後最大の産業被害であ
り、今なお増加しつつあります。
阪神・淡路大震災後22年が経過した現在、少なくとも5名の中皮腫が発生しています。
がれき除去の作業員やマスクも着けないでこれを見守っていた高濃度曝露住民の方は、長期
間の経過観察が必要です。
是非とも肺ガン検診やアスベスト検診をお受けになるよう願っています。

~次回は、阪神淡路大震災当時の状況についての予定です~